○美作市子ども基本条例
令和6年12月20日
条例第36号
子どもは、将来を担う大切な存在であり、子どもが自立した個人として等しく健やかに成長することができる環境を整えていくことが地域社会全体の責務である。
子どもが生まれながらに当たり前に持っている子どもの権利(子どもの成長に必要なもの及び大切なものをいう。)を大人が再確認し、また、子ども自身がそれを認識し、地域社会全体で支え合い、子どもの健やかな成長に繋げることができる環境を整備していくことが重要である。
ここに、美作市の未来をひらく子どもにやさしいまちを実現するため、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、子どもの健やかかつ心豊かな成長を願い、子どもの大切な権利を明らかにし、その保障に関し必要な事項を定めることにより、市、保護者、地域住民、地域団体、教育機関等及び事業者の役割を明らかにし、子どもにとっての最善の利益が優先して考慮され、子どもが幸せに暮らすことができる、子どもにやさしいまちを実現することを目的とする。
(1) 子ども 18歳未満の者その他これらの者と等しく権利を認めることが適当と認められる者をいう。
(2) 保護者 学校教育法(昭和22年法律第26号)第16条に規定する者及び児童福祉法(昭和22年法律第164号)第6条の4に規定する里親その他親に代わり子どもを養育する者をいう。
(3) 地域住民 市内に居住する者、市内に通勤又は通学する者、事業者及び地域団体に属する者をいう。
(4) 地域団体 自治会、美作市民生委員児童委員協議会、美作市健康推進委員会、市民活動団体その他地域で活動する団体をいう。
(5) 教育機関等 学校教育法第1条に規定する学校及び児童福祉法第7条第1項に規定する児童福祉施設をいう。
(6) 事業者 市内で事業を営む個人又は法人その他の団体をいう。
(7) 子ども施策 こども基本法(令和4年法律第77号)第2条第2項に規定するこども施策をいう。
(8) 子どもにやさしい 子どもの最善の利益を図るべく、子どもの権利条約に明記された子どもの権利を満たすため、子どもが持つ権利を享受させるための総合的な努めを行うことをいい、保護者、地域住民、地域団体、教育機関等、事業者等子どもに関わる大人が、子どもの発達しつつある能力に適合する方法で適切な指示及び指導を与える責任及び義務を尊重することも含まれる。
(子どもの権利)
第3条 子どもは、生まれながら当たり前に次に掲げる権利を持つ。
(1) 命を守られ、心と体を大切にされる権利
(2) 日常の衣食住を保障され、安心して暮らすことができる権利
(3) 人種、国籍、出身、言語、性、個性、意見、宗教、障がい、財産その他置かれている状況による、いかなる差別や不利益も受けない権利
(4) 一人一人の人格を尊重され、子どもであることを理由に否定されることなく、自分の思いを自由に表すことができる権利
(5) 持って生まれた力を発揮し、自分らしく成長し、家族や友達と心身ともに楽しく健やかに生活をすることができる権利
(6) 興味関心を広げ、遊んだり、休んだり、学んだりしながら育つことができる権利
(7) 必要に応じて医療や療育を受け、困ったときには相談し、安心して成長することができる権利
(8) 暴力を受けたり大切なものを奪われたりせず、有害なことから守られる権利
(9) 心と体が傷つけられないよう守られる権利
(10) 困りごとや悩みごとがある時に、個人情報や秘密を守られ、一方的な意見の押し付けや決めつけのない、適切な相談を受けることができる権利
(11) 自分に関係のある全てについて、自由に意見を言うことができる権利
(12) 自身又は子どもに関わる全ての事柄の当事者として、意見を聴かれる権利
(13) 適切な情報や考えを知ることができる権利
(14) 仲間をつくることができる権利
(15) 多様な社会的活動に参加することができる権利
(子どもに伝えたいこと)
第4条 子どもの成長に関して、次に掲げる事項を大切にできるよう大人が伝えていくものとする。
(1) 自らが大切な存在であること。
(2) 他人を思いやる心を持つこと。
(3) 基本的な生活習慣や社会のルールを守る意識を身に付け、自らの言動に責任を持つこと。
(4) 主体的かつ積極的に学び、生きていく力を高めること。
(大人の役割)
第5条 大人は、子どもの発達しつつある能力に適合する方法で、適切な指示及び指導を与える責任及び義務を負う。
2 大人は、子どもを一人の人間として尊重し、その考えや思いを受け止め、話を聴き、共に考え、関わり続けるものとする。
3 大人は、子どもが可能性を伸ばし、心身ともに健やかに育つため、子どもの最善の利益が図られるよう努めるものとする。
(保護者の役割)
第6条 保護者は、その養育する子どもに対して最善の利益を図る責務を負う。
2 保護者は、子どもに関心を持って接し、心身ともに健やかな育ちを支援するものとする。
3 保護者は、子どもの生活の場が、安心して眠り、食べることができ、かつ、心のよりどころとなる居場所になるよう努めるものとする。
4 保護者は、その子どもが子どもの持つ権利を享受するために必要な支援を受けるよう努めるものとする。
(地域団体の役割)
第7条 地域団体は、子どもに対し多様な体験や交流の機会の提供に努めるものとする。
2 地域団体は、地域の子育て家庭に寄り添い、支えることに努めるものとする。
(教育機関等の役割)
第8条 教育機関等は、子どもの健やかな成長及び発達にとって重要な役割を果たす場であることを自覚して、子どもと関わりを持つよう努めるものとする。
2 教育機関等は、子どもの心に目を向け、子どもが自由に感じ、考え、学ぶことを保障し、一人一人に応じて支援するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第9条 事業者は、子育てにおける保護者の役割を理解し、仕事と子育てが両立できるよう、職場環境の整備に努めるものとする。
(市の役割)
第10条 市は、保護者、地域住民、地域団体、教育機関等及び事業者(以下「保護者等」という。)との連携に努め、子どもの育成に関する様々な取組を総合的かつ計画的に推進しなければならない。
2 市は、子ども施策を行うにあたり、子どもの意見を聴き、必要に応じてその意見を反映させるよう努めなければならない。
3 市は、学校教育等の進め方について、子どもの意見を尊重するよう努めなければならない。
4 市は、子ども施策の推進に当たっては、国及び他の地方公共団体と連携し、保護者等と協働するよう努めなければならない。
5 市は、保護者等がその役割を果たすことができるよう、必要に応じて支援し、相互に連携が図られるよう調整を行わなければならない。
6 市は、子ども施策の幅広い展開及び一層の充実を図るため、必要な体制を整備するとともに、財政上の措置を講ずるよう努めなければならない。
(市の施策の基本目標)
第11条 市は、次の各号に掲げる事項を基本目標とし、保護者等との連携により、子どもが健やかに成長し、かつ、安心して暮らすことができるまちづくりを推進するものとする。
(1) 子どもを犯罪から守り、交通事故を抑止し、虐待その他有害な環境から守る施策の推進に積極的に取り組む。
(2) 子どもの心身の健康の保持を図るため、健康教育の推進、健康診断の充実に努める。
(3) 子どもの健全な食習慣が確立されるよう、食育の推進に努める。
(4) 子どもの学ぶ意欲や学ぶ権利を尊重し、経済的及び社会的支援に関する施策等の充実を図る。
(5) 子どもが家族を大切にし、全ての人を思いやる心の醸成につながる教育を推進する。
(6) 人間性を豊かにする文化的・社会的活動に子どもが参加し、体験する機会の確保に努める。
(7) 子どもに社会の一員としての自覚を促し、まちづくりに積極的に参画する心を育む。
(子どもの成長への支援)
第12条 市は、子どもが健やかに育つことができるよう必要に応じて経済的、社会的支援を行うため、次の各号に掲げる子ども施策を予算の範囲内で行うものとする。
(1) 子どもの通学に要する経費を考慮し、子どもに対する手当に上乗せを行う。
(2) 仕事と育児の両立を図るため、保育及び放課後活動の支援を行う体制の充実を図る。
(3) 経済的に困難に直面している子どもの支援を図る。
(4) 障がいその他の事由により特別な支援が必要な子どもに対する施策を講ずる。
(5) 子どもの居場所づくりを進めるとともに、地域団体が行う居場所づくりを支援する。
(6) 子どもの医療制度、給付金等の経済的支援の充実を図る。
(7) 子どものスポーツ、文化芸術及び学習活動等の充実を図る。
(相談体制の構築)
第13条 市は、子ども又は子育てに関する相談に対し、関係機関等と連携し、速やかに対応するとともに、相談者が安心して相談することができるよう、多様な相談機会の確保及び相談機能の充実を図るものとする。
(顕彰)
第14条 市は、この条例に基づく、子どもにやさしいまちづくりの推進に対して、特に功績があったと認められる者の顕彰を行うものとする。
(委任)
第15条 この条例に定めるもののほか、必要な事項は、規則で定める。
附則
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から施行する。
(経過措置)
2 この条例の規定にかかわらず、この条例の施行の日から令和7年3月31日までの間は、第2条第4号「美作市健康推進委員会」とあるのは「美作市愛育委員会及び美作市栄養委員会」と読み替えるものとする。