○美作市多様な情報取得・コミュニケーション手段の利用を促進する条例
令和2年3月25日
条例第15号
人が社会の中で生活するには、情報取得やコミュニケーションは欠かせないものです。全ての人々が、障がい・疾患や加齢等による身体的機能の衰えの有無にかかわらず、平穏な日常生活を送り、社会・文化活動その他あらゆる分野の活動に参加し、心豊かに暮らすためには、多様な情報取得・コミュニケーション手段によりお互いの意思や感情を伝え、理解し合うことが必要です。
美作市においても、多様な人と人との相互理解の最初の一歩がコミュニケーションであることを認識し、お互いの関係づくりや日常生活・社会生活において、情報取得・コミュニケーション手段の選択が、困難をきたすことなくでき、その利用の機会を十分に確保することが必要です。
ここに、障がい特性や当事者のニーズに応じた、情報取得・コミュニケーション手段の選択と利用の機会を十分に確保することで、全ての市民が、お互いに相手の尊厳を認め、支え合い大切にし合う共生のまちの実現を目指し、この条例を制定します。
(目的)
第1条 この条例は、障がい者等がその特性に応じ容易に情報を取得できるとともに、多様なコミュニケーション手段の選択及び利用の機会が確保される環境を整備するため、基本理念、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、必要な施策を実施することにより、障がいの有無にかかわらず、分け隔てられることなく、誰もがお互いに人格と個性を尊重し合いながら安心して暮らせる、共生のまち美作市の実現を目的とする。
(1) 障がい者等 身体障がい、知的障がい、精神障がい、発達障がいその他の心身の機能の障がい、難治性疾患又は加齢による身体機能の低下(以下「障がい」という。)がある者であって、障がい及び社会的障壁により、継続的又は断続的に日常生活又は社会生活に制限を受ける状態にある者をいう。
(2) 多様な情報取得・コミュニケーション手段 手話、要約筆記、点字、音訳、代筆、代読、触手話、平易な表現その他の障がい者等が自ら選択する情報取得又はコミュニケーションの手段をいう。
(3) 社会的障壁 障がいがある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
(4) 合理的配慮の提供 障がい者等が障がいのない人と同等に権利を行使できるようにするため、その実施が社会通念上相当と認められる範囲を超えた過重な負担とならない程度で、障がい者等の意向を尊重しながら、その性別、年齢、障がいの特性その他の本人の特性に応じた必要かつ適切な現状の変更及び調整等の措置をいう。
(5) 市民 市内に住所を有する者又は市内に通勤し、若しくは通学する者をいう。
(6) 事業者 市内で事業を行う個人及び法人その他の団体をいう。
(7) 旅行者 市内への旅行者及び市内に一時的に滞在する者をいう。
(8) コミュニケーション支援従事者 手話通訳士及び手話通訳者、要約筆記者、代読を行う者、点訳者、音訳者(朗読者を含む。)、盲ろう者向け通訳・介助員その他の障がい者等への伝達補助等を行う支援従事者をいう。
(基本理念)
第3条 それぞれの障がい特性に応じた情報取得・コミュニケーション手段の選択及び利用の機会の確保は、多様な障がいの特性又は重複障がいの困難性を踏まえ、誰もが障がいの有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有する個人として尊重されるものであることを基本として行われなければならない。
2 合理的配慮の提供は、障がい者等と障がいのない人の双方にとって必要なものであるとの相互理解を通じ、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に行われなければならない。
(市の責務)
第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、市民及び事業者に多様な情報取得・コミュニケーション手段の利用の促進を図るとともに、障がい者等があらゆる場面で多様なコミュニケーション手段による意思疎通ができ、自立した日常生活、地域における社会参加等を保障するため、必要な施策を講ずるものとする。
2 市は、情報取得・コミュニケーションを図ることが困難な障がい者等に対応する際に、その障がいの特性を理解した上で、合理的配慮の提供を行わなければならない。
3 市は、第1項の規定による施策の策定及び実施に当たっては、関係機関と連携を図り、市民及び事業者と協働して取り組むものとする。
(市民の役割)
第5条 市民は、基本理念にのっとり、多様な情報取得・コミュニケーション手段の利用の促進に関する市の施策に協力するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第6条 事業者は、基本理念にのっとり、多様な情報取得・コミュニケーション手段の利用の促進に関する市の施策に協力するよう努めるものとする。
2 事業者は、障がい者等が多様な情報取得・コミュニケーション手段を利用しやすい環境を確保するとともに、誰もが働きやすい環境を整備するため合理的配慮の提供に努めるものとする。
(事業者への支援)
第7条 市は、障がいの特性に応じた多様な情報取得・コミュニケーション手段を利用しやすい環境を構築するために事業者が行う取組に対して、必要な情報の提供その他の支援の提供に努めるものとする。
(施策の実施及び検証)
第8条 市は、次に掲げる施策を総合的かつ計画的に実施するものとする。
(1) 障がい者等が多様な情報取得・コミュニケーション手段により意思疎通し、又は情報を得る機会を拡大するための施策
(2) 市民が容易に意思疎通の手段として情報取得・コミュニケーション手段を選択することができ、かつ、使用することができる環境の構築のための施策
(3) コミュニケーション支援従事者の配置の拡充、処遇改善及び養成のための施策
(4) 前3号に掲げるもののほか、市長が必要と認める施策
2 市は、前項に規定する施策(以下「施策」という。)の実施に当たっては、障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第3項の規定に基づき市が定める美作市障がい者計画及び障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第88条第1項の規定に基づき市が定める美作市障がい福祉計画との整合を図るものとする。
3 市は、施策の実施状況を公表するものとする。
4 市は、施策の実施に当たっては、多様な情報取得・コミュニケーション手段を必要とする当事者、コミュニケーション支援従事者その他関係者の意見を聴き、その意見を尊重するとともに、実施状況について検証を行い、必要な見直しを行うものとする。
(利用及び理解促進の取組)
第9条 市は、次に掲げる多様な情報取得・コミュニケーション手段の利用について支援を行うものとする。
(1) 視覚に障がいのある人における点字、音声、代筆、代読、拡大文字及び音
(2) 聴覚に障がいのある人における手話、要約筆記及び筆談
(3) 盲ろう者における触手話、指点字その他の盲ろう者のコミュニケーション手段
(4) 知的、精神及び発達障がいのある人における平易な表現、写真、イラスト、記号及びジェスチャー
(5) 前各号に掲げるもののほか、障がいのある人におけるコミュニケーション手段として必要なもの
2 市は、前項各号に掲げる多様な情報取得・コミュニケーション手段について、教育の機会の確保及び講座等の開催により市民の理解を深めるための取組を行うものとする。
(情報の発信等)
第10条 市は、障がい者等が市政に関する情報を円滑に取得することができるよう、障がいの特性に応じた多様な情報取得・コミュニケーション手段を利用して情報を発信するよう努めるものとする。
2 市は、災害時等において、障がい者が障がいの特性に応じた多様な情報取得・コミュニケーション手段により必要な情報を迅速に得ることができるよう、関係機関と連携し、情報の発信及び意思疎通に必要な支援体制を整備するものとする。
(施策の横断的な取組)
第11条 市は、施策を効果的に実施するため、その実施について、部局横断的に取り組むものとする。
(旅行者への対応)
第12条 市、市民及び事業者は、多様な情報取得・コミュニケーション手段を必要とする旅行者に対し、利用しやすいサービスを提供するよう努めるものとする。
(財政措置)
第13条 市は、施策を実施するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。
(委任)
第14条 この条例に定めるもののほか、必要な事項は、規則で定める。
附則
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から施行する。
(検討)
2 市は、この条例の施行後3年を目途として、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づき、必要な見直しを行うものとする。