○美作市手話言語条例

令和2年3月25日

条例第14号

手話は、障害者の権利に関する条約や障害者基本法において、「言語」として位置付けられています。

手話は、音声言語と異なる文法体系を有し、手指だけでなく表情、視線、空間や体の動きを使って視覚的に表現する「言語」です。

「言語」とは、お互いの感情を分かり合い、知識を蓄え、文化を創造する上で不可欠なものであり、人類の発展に大きく寄与するものです。

ろう者にとって手話は「言語」であり、物事を考え、コミュニケーションを図り、お互いの気持ちを理解し合い、自分らしく生きていく上でかけがえのないものです。

しかしながら、ろう教育では音声言語を基本とし、口話法が取り入れられ、長年の間手話を自由に使えず、必要な情報を十分に得ることもできませんでした。このような状況の中でも、ろう者にとって「手話はいのち」であり、大切に守り受け継がれてきました。

現在では、手話への理解が広がりつつありますが、今後は、日常生活や社会生活で、より手話を使用しやすい環境づくりが求められています。

ここに、全ての市民は、手話が「言語」であることを認識し、手話への理解と広がりをもって地域で支え合い、手話を使って安心して暮らすことができる美作市を目指し、この条例を制定します。

(目的)

第1条 この条例は、手話に対する理解の促進及び手話の普及に関し、基本理念、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、総合的かつ計画的に手話を使用しやすい環境を構築するために必要な施策を実施することにより、誰もが安心して心豊かに暮らすことのできる美作市を実現することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 市民 市内に住所を有する者又は市内に通勤し、若しくは通学する者をいう。

(2) ろう者 聴覚に障がいのある者のうち、手話を言語として生活を営むものをいう。

(3) 事業者 市内で事業を行う個人及び法人その他の団体をいう。

(4) 旅行者 市内への旅行者及び市内に一時的に滞在する者をいう。

(基本理念)

第3条 手話への理解が深まり、手話を使って安心して暮らすことができる社会の実現は、手話が独自の言語体系と歴史的背景を有する文化的所産であり、全ての市民が相互に人格と個性を尊重し合い、ろう者が手話による意思疎通を円滑に図る権利を有し、その権利は保障されることを基本として行われなければならない。

(市の責務)

第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、市民及び事業者に対し、手話に対する理解の促進及び普及を図るとともに、ろう者があらゆる場面で手話による意思疎通ができ、自立した日常生活及び地域における社会参加を保障するため、必要な施策を講ずるものとする。

(市民の役割)

第5条 市民は、基本理念にのっとり、手話に対する理解を深めるとともに、手話に関する市の施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の役割)

第6条 事業者は、基本理念にのっとり、ろう者が利用しやすいサービスを提供し、及びろう者が働きやすい環境を整備するとともに、手話に関する市の施策に協力するよう努めるものとする。

(施策の実施及び検証)

第7条 市は、次に掲げる施策を総合的かつ計画的に実施するものとする。

(1) 手話に対する理解及び普及を図るための施策

(2) 市民が手話による意思疎通及び情報を得る機会の拡大のための施策

(3) 市民が容易に意思疎通の手段として手話を選択することができ、かつ、使用することができる環境の構築のための施策

(4) 手話通訳者の配置の拡充及び処遇改善等手話による意思疎通支援者のための施策

(5) 前各号に掲げるもののほか、市長が必要と認める施策

2 市は、前項に規定する施策(以下「施策」という。)の実施に当たっては、障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第3項の規定に基づき市が定める美作市障がい者計画及び障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第88条第1項の規定に基づき市が定める美作市障がい福祉計画との整合を図るものとする。

3 市は、施策の実施状況を公表するものとする。

4 市は、施策の実施に当たっては、ろう者、手話を必要とする人、手話通訳者その他関係者の意見を聴き、その意見を尊重するとともに、実施状況について検証を行い、必要な見直しを行うものとする。

(手話を学ぶ機会の確保)

第8条 市は、ろう者、手話通訳者その他手話を使用することができる者及び手話に関わる団体と協力して、市民に手話を学ぶ機会を提供するものとする。

(手話通訳者等の確保及び養成)

第9条 市は、ろう者に対して手話による対応をすることができるよう、手話通訳ができる職員を配置するものとする。

2 市は、ろう者が地域社会において安心して生活できるよう、関係機関と協力し、手話を使うことができる者及びその指導者の確保及び養成を行うものとする。

(教育における手話の普及)

第10条 市は、教育の場において、手話への理解を促進し、手話を学ぶ機会及び手話に触れる機会の確保に努めるものとする。

(災害時等のろう者に対する支援)

第11条 市は、災害時等において、ろう者が必要な情報を迅速に得ることができるよう、情報の発信及び意思疎通に関し、必要な支援を提供するものとする。

(事業者への支援)

第12条 市は、ろう者が手話を使用しやすい環境を構築するために事業者が行う取組に対して、必要な支援を提供するものとする。

(施策の横断的な取組)

第13条 市は、施策を効果的に実施するため、その実施について、部局横断的に取り組むものとする。

(旅行者への対応)

第14条 市、市民及び事業者は、手話を必要とする旅行者に対し、手話への理解ある対応を行い、利用しやすいサービスを提供するよう努めるものとする。

(財政措置)

第15条 市は、施策を実施するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

(委任)

第16条 この条例に定めるもののほか、必要な事項は、規則で定める。

(施行期日)

1 この条例は、公布の日から施行する。

(検討)

2 市は、この条例の施行後3年を目途として、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づき、必要な見直しを行うものとする。

美作市手話言語条例

令和2年3月25日 条例第14号

(令和2年3月25日施行)