重層的支援体制整備事業

重層的支援体制整備事業(重層事業)

国では、制度・分野ごとの「縦割り」や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が「我が事」として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて「丸ごと」つながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく「地域共生社会」の実現を目指しています。

その「地域共生社会」を創っていくための一つのツールが「重層的支援体制整備事業(重層事業)」です。

美作市でも、この「地域共生社会の実現」を目指し、多様化・複雑化する福祉課題に、縦割行政の弊害と制度の狭間で埋もれている市民の課題を解決するため、部内の機構改革を行い、美作市社会福祉協議会と協働で体制を整備してきました。

その一環として、国の重層的支援体制整備事業交付金を活用し、令和3年4月から、全世代包括的相談窓口の運営を美作市社会福祉協議会へ委託し「美作市総合相談支援センター」を美作保健センター内に、「地域ステーション」を合併前旧町村の支所単位で設置し、令和4年4月から重層事業を開始しました。

美作市の相談支援体制の経過

国では、平成27年度から生活困窮者自立支援法が施行され、生活保護に至るまでの生活困窮者を、第2のセーフティネットにより支援する制度を確立しました。
これにより、困窮に陥った方に対し、就労支援員が面接同行したり、履歴書記入を補助したり、障害年金の受給申請を支援することに対し、国の補助を受けることができるようになりました。
本制度のおかげで生活に課題を抱える困窮者の様々な相談にのり、困窮者に対し適切な支援方法を選択する体制が構築されます。

美作市では、この制度が適用される5年前の平成22年度から、美作保健センター内に「総合相談係」を設け、相談内容を問わない包括的相談窓口として生活困窮者をはじめ、DV、虐待、借金、滞納、障害、年金、ひきこもり、介護、入院(傷病)、就労等、様々な問題に対し支援してきました。

結果、生活保護率は、平成24年度をピークに、令和4年度末には約7割減となりました。
これは、困窮者が生活保護に至るまでに、総合相談係で様々な自立支援を実施し、生活保護以外に自立する道がないと判断した場合に生活保護につなぐ支援を行った結果と分析しています。

総合相談係の効果が現れてきた結果、次なる美作市福祉行政の目指すべきところは、縦割行政の弊害のない市民目線に立った相談支援の確立と、SOSを発する事のできない市民の声を拾うアウトリーチの実現、多機関の連携をさらに強化し、福祉行政に携わる関係者全員が心のこもった支援を実施できる組織体制の整備であると考え、令和3年度から「総合相談支援センター」と「地域ステーション」を設置し重層事業に取り組みました。

「総合相談支援センター」と「地域ステーション」の設置

総合相談支援センターの相談対象者は、生活困窮者のみならず、介護保険法に定める「地域包括支援センター」機能を有していること、また地域福祉の要となる社会福祉協議会がその役割を担うことから、世代や分野を問わない相談を受け付けています。

市民の抱える様々な複層的な課題に対し、専門職が多機関協働により迅速に対応し、早期課題解決に向け支援を実施していきます。

「ひきこもり」や「8050問題」「孤独孤立問題」「ヤングケアラー」「介護と育児のダブルケア」などの相談にも対応します。

事業を社会福祉協議会に委託するメリット

行政職員が福祉行政の支援を行うにあたり、信頼関係の強さが支援方法に大きく影響するにもかかわらず、せっかく構築したクライエント(利用者)との信頼関係が、人事異動の度にスタートラインに戻り、新担当者が時間をかけて再構築しなければならない事が課題となっていました。
また、様々な福祉サービスが拡充されてきている現在でも、制度の狭間でサービスの支援が受けられない人が存在するのも事実です。
そのような狭間のニーズを充足するのが、地域福祉の中核的役割を担う社会福祉協議会です。

重層事業における相談窓口と多機関協働事業の司令塔(コントロールタワー)の役割を社会福祉協議会が担うことにより、次のようなメリットがあると考えています。  

  1. 人事異動に影響されにくいため、相談者との信頼関係が崩れにくい
  2. 専門職が多く在籍しているため、重層事業の趣旨の理解が容易
  3. 事業の趣旨を理解した者が継続して支援にあたるため、方針が途中で変わらない
  4. 責任を持って社協が司令塔の役割を担うことにより、行政の各専門部署が連携しやすい
  5. 地域に根ざした福祉専門機関であるため、地域の詳細情報が入りやすい(アウトリーチに最適)

美作市の相談支援体制図

美作市の重層事業の特徴

美作市は多機関連携に関し司令塔が不在(明確でない)で円滑な連携の妨げになっていたこと、福祉行政の職員の人事異動により支援の継続がなされにくかったことが課題で、司令塔を作ること、支援の継続性を担保することが重要であると感じていました。

また地域課題の解決において、地域住民の声を吸い上げる仕組みとして、介護保険に定める「地域包括ケアシステム」を構築し「美作市地域福祉計画」に位置づけ、包括的に解決する仕組みは構築していました。
しかし、実際にはうまく機能しているとはいえず、いわゆる「絵に描いた餅」になっていたことから、地域住民の声が市福祉行政に反映させる仕組みを再構築する必要性もありました。

この2つの課題を重要視し重層事業を活用して解決していこうと考えました。

個別支援(治療福祉)

上記課題を解決するための仕組みづくりのひとつは、いわば「個別支援」です。
課題を抱えた世帯を、いかに迅速に、いかに適切に、いかに効率よく、支援していくかが重要になります。

医療に例えると、個々の患者さんに対する身体や心の「治療」に該当する部分です。

課題の一つである行政職員の人事異動が支援に影響されない仕組みづくりは、その解決策として、社会福祉協議会に事業を委託することで対応しました。
社協委託が解決につながる理由は、上段の「社会福祉協議会に委託するメリット」の項目をご覧ください。

具体的には、司令塔が不在(明確でない)という課題に対する解決策として、重層事業により設置した「総合相談支援センター」の包括化推進員と、「社協地域ステーション」のコミュニティソーシャルワーカー(CSW)に、司令塔としての役割を担ってもらい、(重層的)支援会議を開催する際のファシリテーターとして位置づけました。

  1. 縦割り行政と「たらいまわし」の解決
    → 断らない相談窓口の設置(包括的相談支援事業)
  2. より強固な多機関との連携
    →司令塔の配置(多機関協働事業)

司令塔の主たる役割

「総合相談支援センター」と「地域ステーション」は、他機関連携における司令塔の役割を担いますが、具体的には次の業務を実施します。

  1. 複層的な問題を抱えた家庭の支援に対し、支援機関から依頼があった場合の(重層的)支援会議の開催
  2. ケースのアセスメント
  3. 招集メンバーの決定、日程調整、会議場所の確保、案内の送付
  4. 会議当日のファシリテート(情報共有、目標設定、役割分担の決定)
  5. 議事録の作成、決定事項(役割分担)のフィードバック(参加者への送付)

重層的支援会議と支援会議の内容

美作市では、重層的支援会議と支援会議は双方とも個別ケース会議の位置付けであり、内容は同じです。
本人同意が取れない場合の会議は「支援会議」として開催し、本人同意が取れれば「重層的支援会議」です。

会議の内容は次の通りです。

  1. 会議の最低構成員は、他機関協働事業者(司令塔)1名、重層事業担当課職員1名の計2名
  2. 必要に応じてクライエント(利用者)の関係支援機関に参加依頼
  3. 初めて会議に参加するメンバーがいれば、会議開催前に、重層事業の説明と守秘義務、特に支援会議の場合は社会福祉法に定められた罰則規定を説明
  4. 他の会議(要対協の個別ケース検討会議など)との重複開催を積極的に実施

地域課題解決(予防福祉)

「個別支援」だけでは「地域共生社会の実現」にはつながりません。
「地域共生社会の実現」にあたっては、地域の課題を把握し「地域づくり」を一体的に整備する必要があります。

医療に例えると、病気をいち早く発見するために健康診断を勧奨したり、病気にならない身体や心をつくるための「予防」に該当する部分です。

重層事業では、「相談支援」「地域づくり支援」「参加支援」を一体的に整備することになっていますが、美作市では、この「地域づくり」のための地域課題を「ケア会議」を活用して把握し市福祉行政に反映させる仕組みを構築しています。

また「助けて」の声を出せない人へ手を差し伸べ支援を実施することも重要になります。

「手を差し伸べる支援」とはアウトリーチ事業のことです。「ひきこもり」問題などは、美作市内では、まだまだ「知られたくない」という意識が家族にあり、問題が潜在化し発見されにくい状況にあります。
「社協地域ステーション」のCSWや包括相談員は、地域で開催される民生児童委員定例会や地区ケア会議等に参加し、民生児童委員、区長、愛育栄養委員、福祉委員等から地域で「助けて」の声を出せない人の情報を収集し、社会資源につなげる支援を実施していきます。

  1. 地域住民の声を行政に反映させ社会資源を創る
    → 小地域単位での会議開催(地域包括ケアシステム)
    → 社会資源の創造(地域づくり事業)
  2. 「助けて」の声を出せない人への支援を実施
    → 潜在的課題を抱えたケースの発掘(アウトリーチ事業)
    → 社会資源へつなげる(参加支援事業)

ケア会議のしくみ

美作市では、住民に身近な圏域を31地区に分けた「地区ケア会議」と、市内を合併前旧町村単位の6地域に分けた「地域ケア会議」、そして1つの「美作市ケア会議」の3階層で「ケア会議」を運営しています。

その運営は、「地区ケア会議」を社会福祉協議会が、「地域ケア会議」を包括支援センターが、「美作市ケア会議」を行政が、それぞれ責任をもって運営することとし、下層会議のメンバーの代表が、上層会議に参加し住民の意見を反映する仕組みを構築しています。

また、市地域包括ケア会議にあがった議題や課題は、行政全体が集まる「庁内連携会議」につなげて、社会資源の構築や課題解決につなげる仕組みとしています。

ケア会議の構成メンバーは下記のとおりです。

地区ケア会議

民生児童委員、愛育委員、栄養委員、ボランティア、区長、社協職員、包括職員、市職員

地域ケア会議

地区ケア会議代表、民生児童委員、愛育委員、栄養委員、ボランティア、ケアマネ、自治振興協議会代表、社協職員、包括職員、市職員、支所長、警察(駐在)

市地域包括ケア会議

地域ケア会議代表、民生児童委員、愛育委員、栄養委員、ボランティア、社協職員、包括職員、市職員

重層的支援体制整備事業実施計画

重層事業は仕組みを構築しただけで完全な形になるわけではありません。

地域課題は年々変化しており様々な形に変化していきます。

PDCAサイクルにより現在の計画や仕組みの見直しを実施し、現状に応じた形に作り直していく必要があります。

下記に現状の計画を掲載していおりますが、今後より良い計画となるよう見直しを行っていく必要があります。

このページに関するお問い合わせ先

保健福祉部 福祉政策課
〒707-0014 岡山県美作市北山390番地2
電話番号:0868-75-3913
ファックス:0868-72-7702
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